抄録
乳房超音波検査における腫瘤の発見率向上のため,腫瘤の自動検出手法が開発されている.従来手法では収集した腫瘤データに基づいて検出対象を定義し自動検出を行うが,腫瘤は正常な組織と比較してサンプル数が少なく,形状や明るさは多様で,定義が困難である.そのため,正常組織をモデル化し,その正常モデルと合致しない領域を異常(腫瘤)として検出する手法が有効である.しかし,乳腺以外の脂肪や筋肉の影響で正常モデルが複雑化し,腫瘤の検出精度が低下する.そこで本稿では,乳房超音波画像において乳腺組織にのみ着目した腫瘤検出手法を提案する.乳房超音波画像の各領域から,乳腺組織のもっともらしさを表す乳腺尤度と正常モデルからの逸脱を表す異常度を算出し,乳腺尤度と異常度が共に高い領域を腫瘤として検出する.実験では,腫瘤ありの乳房超音波画像に提案手法を適用し,乳腺尤度を用いない従来手法と比較して腫瘤検出精度が向上することを確認した.