衛生動物
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コガタアカイエカ系統間の日本脳炎ウイルス媒介能の差
高橋 三雄
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1982 年 33 巻 4 号 p. 325-333

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抄録

日脳流行地の日本産3系統(京都, 長崎, 奄美)と台湾産1系統, および非流行地のパキスタン産3系統のコガタアカイエカを用いて, 日脳ウイルスJaGAr#01株の媒介能を比較した。高濃度のウイルスで蚊を経口感染させ, 30℃に置いたとき, 奄美・長崎の2系は高媒介性, 京都・台湾の2系は中媒介性, パキスタン3系統は低媒介性であった。なお, 蚊を長期間(28日)飼育すると, 京都およびパキスタン(Tulamba)系の媒介能はむしろ低下した。感染ウイルス濃度をさげ, 飼育温度を25℃とすると, 奄美系では媒介能は前実験と変わらなかったが, 京都およびTulamba系では媒介能は著しく低かった。蚊のウイルス感受性と媒介性はかならずしも並行的でなく, 両者はおそらく異なった遺伝的機構によって支配されていると考えられる。パキスタンまで日脳ウイルスが分布していない理由としては, 蚊の媒介能力の問題よりも, むしろ有力な増幅動物であるブタが宗教的理由により飼養されていないことにおもな原因があると推察される。

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© 1982 日本衛生動物学会
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