肺がん検出のエラーとして大きく認知エラー,判断エラーがあるが,まずは,候補結節に読影医の目を向けさせ,認知エラーをいかに減らせるかが重要である.そのおもな要因として,既存構造の骨や血管影がある.将来,肺結節の自動抽出を考えた場合,偽陽性となりやすい肺門部肺血管の処理は重要となる.そこで,本論文では,1枚の胸部X線画像から,二次元ヒストグラムを用いて,偽陽性となりやすい肺門部肺血管やその正接像などの陰影を抑制し,血管や骨に重なる肺結節を相対的に明瞭化する新しい手法を提案する.JSRTデータベースの腫瘤画像154例のうち「容易」と「極めて困難」を除く117例に対し,提案画像の画質を画像診断専門医と医療系学生の2 名が評価した結果,少なくとも76%の画像に対し高評価が与えられ,血管影を抑制することで,真の肺結節を指摘しやすい画像が作成できた.また,原画像のみと提案画像との併用を比較した結果,提案手法は肺結節の存在診断として十分機能し得るとみなせた.