2017 年 35 巻 5 号 p. 273-280
病理医は,HE(hematoxylin and eosin)染色後の病理画像を顕微鏡下で目視観察し,腫瘍有無を診断する.しかし,施設ごとに染め方が異なるため,染色濃淡のばらつきが発生し,病理診断の質の向上に影響を与えている.また,従来の機械学習技術では,人が設計した特徴量を用いて識別器を作成するため,各組織の腫瘍の識別に有効な特徴量の導出に多くの時間がかかるという問題がある.そこで本研究では,病理画像内の腫瘍有無を自動で識別する手法を提案する.具体的には,主成分分析による軸変換を行って染色濃淡の異なる病理画像を自動分類し,CNN(convolutional neural network)を用いて分類した画像グループごとに識別器を作成し,その識別器を用いて腫瘍有無を判定する.本手法を用いることで,胃管状腺がん病理組織標本のデジタル画像を用いた実験において,腫瘍有無の識別精度の向上に有効であることが示された.