抄録
X線の位相情報を用いたCT,すなわち物体の屈折率分布で三次元画像を形成する技術は,1990年代前半に筆者が発明し,その後複数のX線位相コントラスト法のもとで実現されている.物体によるX線の位相シフトや屈折(位相シフトの微分)を検出する方法,あるいは,X線伝搬からの位相回復などがその具体的アプローチである.最近は,解像できない程度の細かい散乱体が物体中にあるときに生じる位相コントラストの減退を信号として処理し,散乱体の分布を三次元再構成するCT技術も派生してきている.また,シンクロトロン放射光が位相コントラスト生成に欠かせないと考えられた時代は過ぎ,実験室X線源を用いたX線位相CTも可能となってきた.これは,X線Talbot干渉計,あるいは,X線Talbot-Lau干渉計とよばれるX線透過格子を用いてX線の屈折や散乱を検出する方法に基づいており,産業界からの期待も膨らんでいる.本稿では,特にこれにまつわる最近の進展を紹介する.