2019 年 37 巻 2 号 p. 89-94
本稿では,AMEDが支援する医学系学術団体と国立情報学研究所とが連携して構築している,大規模かつヘテロな(取得施設・患者属性・疾患などのばらつきの大きなデータから構成される)医用画像データベースを用いた画像処理について述べる.特に,日本医学放射線学会がデータ提供元となっているCT画像データベースでは,撮影対象部位が全身の各部に及び,特定の対象疾患が決まっていないため,画像データのバリエーションが大きい.このデータベースに対して,多様体学習による次元圧縮とクラスタリングを適用し,目的とする解析に必要なデータを抽出した後,AIを用いた全自動画像解析を適用した.ここでは整形外科での応用例として,筆者らがこれまでに開発してきた筋骨格解剖の自動認識システムを大規模症例に対して適用した例を紹介する.整形外科手術においては,患者個別の筋骨格解剖の理解は不可欠であり,性別・年齢等,それぞれの属性ごとの筋骨格解剖の統計的分析は,診断や手術計画の支援に有用である.