2020 年 38 巻 5 号 p. 228-235
内視鏡手術は,術者により行われる内視鏡画像に基づく手術器具と臓器のインタラクションであり,両者のインタラクションに関する定量的な情報を実時間で抽出する技術は,術者を補佐する手術支援ロボットの自律レベル向上にきわめて有用である.本稿では,新学術領域研究「多元計算解剖学」の公募研究A03-KB102(デプス画像を実時間で生成可能なステレオ内視鏡に基づく手術支援ロボットの自律制御)として実施した研究の中から,(1)手術器具先端と臓器表面の距離推定,(2)臓器牽引時にかかる手術器具先端荷重の推定に取り組んだ例を紹介する.本研究で導入したステレオ照合エンジンは,多元計算解剖学モデルの1 つの「元」を提供する術中モダリティーであり,手術支援ロボット制御へのさまざまな応用展開が可能である.