近年,病理組織標本全体をディジタル化したバーチャルスライドが普及している.われわれは,細胞異型や構造異型が小さいため診断が難しい早期肝細胞癌の診断支援を目的として,鑑別に有用とされる核密度の分布をバーチャルスライド全体で可視化する手法を実現した.しかし,早期肝細胞癌は超高分化癌といわれるほどに,種々の点で正常肝細胞と類似した形態をしている.診断に慣れていない病理医にとっては,癌の存在を認識するのが最初の問題点である.支援機能の向上のためにはより多くの特徴量分布を可視化し,癌の存在領域を示唆するのが望ましい.そこで,肝細胞核の抽出後に新たに核輪郭を再抽出し,有用な特徴量である円形度を含む核の形状特徴量の分布を可視化する手法を実現した.算出した特徴量は円形度,長軸短軸比,重心から輪郭点までの距離の標準偏差,核面積である.各特徴量の絶対平均比率誤差は,それぞれ0.26%,2.02%,9.75%,6.94%であった.可視化までの処理は自動化されており,大きな手術標本でもPC 1台を用いて1時間以内で処理可能である.