2025 年 43 巻 1 号 p. 3-10
高い線量集中性をもつ重粒子線がん治療は,正常組織への影響を抑えつつ腫瘍を効果的に制御できる.重粒子線を生体に照射すると,副次的に陽電子放出核種が生成される.そのため,実際の治療ビームに関する情報を得るには,開放空間を有するOpenPETを用いた照射中のイメージングが有効であり,治療ビームの飛程や治療効果を照射直後にその場で評価できると期待される.われわれは,2008 年の初期提案以降,OpenPETの研究開発を継続しており,HIMAC(Heavy Ion Medical Accelerator in Chiba)の物理実験室での照射イメージング実験を経て,2023 年より頭頸部がん患者を対象とした臨床試験を開始した.本稿では,これまでのOpenPET装置の開発と,現在進行中の臨床試験について概説する.