近年,GPUの性能の向上により,ボクセルデータを対象とした深層学習モデルの構築が可能となりつつある.しかし,一般に胸部CT画像データは1症例あたり200~300×512×512ほどの解像度で記録されており,この規模のデータの処理には膨大なGPUメモリーや学習時間を要する.そこで本研究では,胸部CT画像において,ボクセルデータを効果的に扱うための手法を提案する.1つ目は,冠状軸方向,矢状軸方向,垂直軸方向の3つの軸を基準としてスライスをサンプリングしたデータを用いる手法である.少数派クラスの識別性能をprecision-recall area under the curve(PR-AUC)で評価した結果,学習データと同じドメイン(施設)のデータに対し平均0.9948標準偏差0.0103,異なるドメインのデータに対し平均0.5177,標準偏差0.1320の識別性能を示した.2つ目は,画像から輝度情報とテクスチャー情報を抽出し,これらを組み合わせたデータをモデルへの入力とする手法である.学習データと同じドメインのデータに対し平均0.9071,標準偏差0.1008と高い識別性能を保ったまま,異なるドメインのデータに対しても平均0.8174,標準偏差0.0546の識別性能を達成した.