抄録
デジタル・プラットフォームの検討企業のケースを基に管理会計のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の内容を研究した。まず,最初に提唱されたDXの意味と2018年の経済産業省「DXレポート」を参考にして,本研究におけるDXの定義とその対象とする管理会計の範囲を整理し,管理会計のDX(管理会計DX)を定義した。次に,定義された管理会計DXに基づく判定条件を作成し,先行研究のレビューを行った。結果は,国内外とも管理会計DXの先行研究は十分とは言えず,ほとんどは概念的な研究であった。そこで,本研究では実際のケースを探索的に調査研究することとした。その結果,地域銀行へのアクション・リサーチによってデジタル・プラットフォーム実現のためには管理会計DXが不可欠であることが分かった。企業全体のデジタル・ビジネス戦略に適合するように管理会計DXが求められるものであるが,逆に管理会計DXの対応スピードや内容が企業のデジタル・ビジネスの実現に影響している可能性がある。さらに,ケーススタディーの結果,DXによる新たな管理会計の可能性としてハイブリッド化,埋め込み化,およびアクション化の3点のインプリケーションが得られた。これは,今後の管理会計研究と経営実務の両面に貢献するものである。