抄録
近年,日本企業の管理会計実践事例として,ライン部門に利益責任を与えるケースが多数報告されている。本稿は,セーレン株式会社の事例検討を通じて,プロフィットセンター(PC)化されたライン部門における利益創出のメカニズムを考察するものである。考察の結果,製造部門が利益責任を負うことにより販売部門の振替価格交渉での交渉力が強化されていると同時に,製品の競争優位の源泉となる生産管理システムの存在が製造部門にも強い交渉力を与えており,これら2つの力の間の緊張関係が利益創出に強く関わっていることが明らかになった。