2014 年 7 巻 1 号 p. 39-51
介護事業を営む組織を対象に,組織が公共の福祉への貢献を重視する程度(公益志向)によって業績測定尺度の利用を変えるかどうかを調査した。本研究では2つの仮説の検証を試みた。第1に,公益志向が強い組織では組織の社会的使命の達成を測定する尺度(アウトカム尺度)の利用確率が高まる。第2に,公益志向の強い組織では財務的業績尺度の重視度が低下する。千葉県の介護事業者を対象にした質問票調査から得たデータをもとに仮説を検証した結果,公益志向の強さがアウトカム尺度の利用に与える影響は限定的であり,公益志向の強い組織ほど財務的業績測定尺度を重視していない傾向が観察された。