抄録
本稿では,国内外のTDABC 研究の体系化および今後の研究課題の導出(方向性の提示)を目的に国内外の先行研究をレビューする。国内研究は理論研究を主に採用し,TDABC の計算構造,キャパシティ管理としての有用性,TDABC と諸技法との比較や応用・併用可能性という3 つの論点に分類可能である。それに対して,海外研究は実証研究あるいは事例研究を採用し,TDABC の計算構造およびTDABC の実践的影響に関する研究(もしくはその混合研究)に識別可能である。国内外共通の論点はTDABC の計算構造についてであり,フレームワークおよび実証研究という2 つの側面から整理した。フレームワークでは個人属性や個人間の相互作用による活動の異質性をいかにして反映させていくべきかについて,実証研究ではTDABC の計算構造における誤差間のトレードオフの程度を抑制する効果がいかなる諸要件のもとで実現するかを検証していく必要性やリサーチ・デザインもしくはデータの質という問題の改善,アクション・リサーチをはじめとする関与型研究の可能性などについて示唆した。結論として,TDABC の国内外の先行研究を初めて網羅的にレビューし体系化したこと,研究内容の体系化によってTDABC研究の動向を可視化し共通の論点を提示したこと,国内外の共通論点に基づき今後のTDABC 研究で取り組むべき研究課題を明示したことがあげられる。