マテリアルライフ学会誌
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低温環境における積層フィルムの経年変化予測に関する研究
湯淺 明子島 岐宏徳満 勝久
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2018 年 30 巻 1 号 p. 11-17

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抄録

本研究では,-100°C以下の低温環境における積層フィルムの経年予測に関し,ヒートショック試験による加速試験と,マスターカーブによる経年変化を予測する手法とについて検討を行った.積層フィルムは,ナイロンフィルム,アルミニウム箔,ポリエチレンフィルムを接着剤で貼り合せた試料を使用し,ヒートショック試験では,環境温度-130°Cと25°Cに交互に暴露した.ヒートショック試験において,サイクル数増加に伴う動的引張弾性率の変化を確認したが,サイクル数に該当する経過年数が不明であったため, マスターカーブによる経年予測を行う手法との組み合わせについて検討した.その結果,一例として,マスターカーブによる1年経過に該当するヒートショックサイクル数が,70回であることがわかった.このようにして,ヒートショックサイクル数に該当する経過年数を決定した.また,複合材料である積層フィルムのマスターカーブを低温環境下で合成するにあたり,構成材料ごとの線膨張係数が異なることにより,弾性率を正しく計測できず,その結果,マスターカーブが正確に合成できていない可能性が考えられた.そこで,積層フィルムの構成材ごとに動的引張弾性率を計測し,体積分率との積より複合則により合成したマスターカーブと,積層フィルムのマスターカーブとを比較することで,積層フィルムの実測値から得たマスターカーブの妥当性検証を行った.その結果,複合側に従い算出したマスターカーブと,実測値から得たマスターカーブが測定器公差の範囲(10%以内)で合致したため,本検討で用いた積層フィルムのマスターカーブは適正に測定できているものと判断した.

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