抄録
FeCl3存在下でのポリ塩化ビニル (PVC) の脱塩化水素反応について検討した.FeCl3の触媒活性は高く, 熱分解が起こらない低温度領域でも反応は容易に進行した.しかし, 脱塩化水素反応によってPVC中にポリエンが形成されると, ポリエンがFeCl3を還元して触媒活性は大きく低下することが分かった.この活性低下は還元生成物であるFeCl2の触媒活性が極めて低いことによるものであった.触媒の還元率は反応率に依存し, PVCの脱塩化水素率が12および30%のときの還元率はそれぞれ約50および90%になった.反応系に水を添加するとFeCl3の還元反応は促進され, 還元に水が関与することが示唆された.また, 水が関与しない還元機構も存在するものと推測され, ポリエンによるFeCl3触媒の還元は二つの経路で進行するものと結論した。