抄録
水溶性珪酸アルカリとしての水ガラスの建築用の無機接着材及び表面コーティング材としての利用のための基礎特性の資料を得ることを目的として, 温度20℃, 相対湿度60%の恒温恒湿状態で各種の下地に塗布された塗膜の硬化過程を, 反射吸収型赤外分光分析による赤外吸収スペクトルの経時変化で調べると共に, 硬化後の塗膜の耐水性を, 50℃温水浸漬下で, 炎光分析によるアルカリ金属イオン溶出量及び硬化塗膜の重量減少の経時変化として調べた.その結果, 水ガラスの硬化塗膜は最も基本的なシロキサン構造を持つ無機高分子として位置づけられること, 耐水性に硬化温度が大きく影響すること, 硬化塗膜の温水中での劣化過程は, シロキサン構造からシラノール構造への解重合反応に基づくもので, その重量減少の経時変化は一定の誘導期を伴う定数項を伴う放物線則に従うことなどが明らかとなつた.これらの劣化過程に関する実験結果についての考察と総合化を基礎として, 塗膜の劣化機構に関する理論的解析が展開されている.