立体規則性の異なるポリプロピレン (PP) の熱酸化劣化を, 各劣化因子 (触媒残渣, 分子量, 酸素) との相関を考えながら個別に解析した. 工業的に生産されているアイソタクチックPP (lso-PP) に着目し, チタン残渣の影響及び分子量の影響を検討した結果, 空気中, 溶融状態 (200℃) での熱酸化劣化に対して両因子ともあまり影響を与えないことが示された. さらに, 分子量が等しく立体規則性の異なる3種類のPP (Iso-PP, アタクチックPP (Ata-PP), シンジオタクチックPP (Syn-PP)) の劣化挙動を検討した. その結果, 主鎖がメソ構造のIso-PPでは著しく劣化が起こる条件下でも, Ata-PP, Syn-PPではほとんど劣化が進行しないことが明らかになった. また, 酸素不在下ではIso-PPにおいても劣化が抑制される一方で, 酸素加圧下では比較的安定なSyn-PPでも劣化が容易に進行することが見い出された. これらのことから, PPの熱劣化に対する立体規則性と酸素の影響は, 触媒残渣や分子量の影響に比べ大きいことがわかる.