Medical Mycology Journal
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総説
Trichophyton tonsurans 感染症の現状と対策
小川 祐美
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2012 年 53 巻 3 号 p. 179-183

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抄録

Trichophyton tonsurans 感染症が, わが国で蔓延し始めて10年以上経過する. 当初は, 高校 ・ 大学生の格闘技選手間での集団感染が特徴であったが, 徐々に低年齢層や競技とは無関係の患者が増加している. 感染者数などは, 菌種同定の不便さから把握が困難であるが, 格闘技選手間では6 ~ 10%程度の頭部の保菌者が存在し, その80%以上が無症候性キャリアである. 実際には自ら受診する症状が出にくく, 潜在患者が多いと考えられる. 本感染症は, 体部白癬 ・ 頭部白癬が主たる病型である. 特徴は臨床症状が軽微で, 慢性化すると症状がほぼ消失し, 無症候性キャリアとなり感染源となる. 生毛内寄生を伴う体部白癬には, 特に注意が必要である. 診断は通常の白癬と同様 KOH 検査法と真菌培養で, 原因菌の分離 ・ 同定である. 治療は, 頭部の菌の有無を目安に抗真菌剤の外用 ・ 内服を柱とする. 感染予防も重要な課題である.

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© 2012 日本医真菌学会
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