抄録
ルリコナゾール (LLCZ) は広い抗菌スペクトラムと強い抗真菌活性を有し, 白癬の主要起因菌であるTrichophyton rubrumおよびTrichophyton mentagrophytesに対して特に強い活性を示すことから,爪白癬への適応拡大が進められている. 真菌症治療に際しては, 起因菌に対する抗真菌活性に加えて感染局所における動態が重要であるが, 爪ケラチンとLLCZの親和性を調べた報告はない. 本研究では, 健常人 (ヒト) 爪およびブタ蹄から調製したケラチンへのLLCZの吸着性および, これらを緩衝液で洗浄した際に上清中に遊離するLLCZ濃度を調べるとともに, 上清の抗菌力価を生物学的に検定することで本薬の爪白癬に対する有効性を検討した. その結果, LLCZはいずれのケラチンへも80%以上吸着され, 緩衝液による10回洗浄の累計では吸着量に対してヒトで47.4%, ブタで52.5%および50.8%が遊離した. ディスク拡散法によりこれら上清中のLLCZの抗真菌活性を確認した. 以上より, LLCZは爪ケラチンをリザーバーとして爪内に貯留し, 貯留したLLCZは徐々に遊離して感染局所で起因菌に対して抗真菌活性を示すことで, 爪白癬に対して治療効果を発揮しうると考えられた. また, いずれのケラチンに対してもLLCZは類似の挙動を示したことから, ブタ蹄は非臨床試験におけるヒト由来試料の代替となるものと考えられた.