抄録
動作や姿勢の解釈では,個体と課題と環境との相互作用として捉えるシステム理論が現代の中心的概念となっている。個体の問題は,運動と知覚と認知に関与するサブシステムに分類できる。中枢神経障害領域患者では,これらが機能不全に陥るだけではなく,総合的な機能連関の問題として活動が制限されている。運動パターンは全身的な広がりを持ち,随意的要素と不随意的要素が関与している。そこで,中枢神経障害領域患者の動作を運動連鎖障害としてとらえ,特徴的な徴候を提示して臨床推論を展開した。運動連鎖を理解しやすくするために,ベルンシュタインの背景レベルとクライン・フォーゲルバッハの運動学を紹介し,評価の視点を提示し,さらに姿勢制御や運動パターンの改善に向けた具体的介入手技を紹介した。治療原則は,ベルンシュタインの背景レベルを修正する手順で進め,姿勢反射を利用しながら抑制されたシナジーを活性化させることが重要である。