理学療法の歩み
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27 巻, 1 号
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特別寄稿
  • 芝崎 淳
    2016 年 27 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/21
    ジャーナル フリー
    神経障害に対するリハビリテーションにおいて,理学療法は重要な役割を担っているはずだが,各種ガイドラインで根拠のある高い評価を得ることはできていない。したがって,理学療法士には,神経障害に対する有効な理学療法を模索し,標準的な評価方法や治療を開発するための活動が一層求められる。そして,最新のエビデンスを求めるだけではなく,それらの臨床応用と検証を行っていく必要がある。日本理学療法士協会内に設立された「神経理学療法学会」では,これらの問題に対して,基礎・臨床研究を推進し,エビデンスに基づく理学療法の開発と普及等を図るべく活動を行っている。我々は,これらの活動に積極的に参加し,自己啓発に努めなければならない。神経理学療法の発展には,標準的な知識と技術の構築は欠かすことができない。組織のみならず,個々の理学療法士の成長が求められる。
  • 佐藤 房郎
    2016 年 27 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/21
    ジャーナル フリー
    動作や姿勢の解釈では,個体と課題と環境との相互作用として捉えるシステム理論が現代の中心的概念となっている。個体の問題は,運動と知覚と認知に関与するサブシステムに分類できる。中枢神経障害領域患者では,これらが機能不全に陥るだけではなく,総合的な機能連関の問題として活動が制限されている。運動パターンは全身的な広がりを持ち,随意的要素と不随意的要素が関与している。そこで,中枢神経障害領域患者の動作を運動連鎖障害としてとらえ,特徴的な徴候を提示して臨床推論を展開した。運動連鎖を理解しやすくするために,ベルンシュタインの背景レベルとクライン・フォーゲルバッハの運動学を紹介し,評価の視点を提示し,さらに姿勢制御や運動パターンの改善に向けた具体的介入手技を紹介した。治療原則は,ベルンシュタインの背景レベルを修正する手順で進め,姿勢反射を利用しながら抑制されたシナジーを活性化させることが重要である。
  • 阿部 浩明, 大鹿 糠徹, 辻本 直秀, 関 崇志, 駒木 絢可, 大橋 信義, 神 将文, 高島 悠次, 門脇 敬, 大崎 恵美
    2016 年 27 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/21
    ジャーナル フリー
    これまでの脳卒中者に対する理学療法技術は十分な科学的効果検証を行われずに継承されてきたものが少なくなかったかもしれない。脳卒中者に対する理学療法の治療指針を示す脳卒中理学療法診療ガイドラインにはエビデンスに基づき推奨される治療が記載されている。しかし、実際の理学療法の臨床では多様な意見があり、必ずしもガイドラインが有効に用いられてはいない感がある。脳卒中の理学療法は主観的な評価が中心であったり、経験のみに基づいて構築されたりしていくべきものではなく、有効と思われる治療は検証を経た上でその有効性を示していくべきであろう。
    ここでは我々がこれまで取り組んできた急性期の脳卒中重度片麻痺例に対する歩行トレーニングの実際について概説し、装具に関わる臨床および学術活動について次号に渡って紹介したい。
講座
  • ―NICU入院時からの発達支援と療育指導ならびに小児がんの理学療法―
    齋藤 悟子, 齋藤 翔吾, 八重樫 淑子, 佐藤 房郎
    2016 年 27 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/21
    ジャーナル フリー
    2011年に日本理学療法士協会より理学療法診療ガイドライン第1版が公表され,小児領域では脳性麻痺の理学療法について掲載された。しかし,日本の救命医療の進歩により,小児領域の理学療法では,脳性麻痺のみならず,発達遅滞,視覚障害,聴力障害,てんかん,注意欠如や多動性障害,呼吸器障害など対象は多様となる。また,様々な理由により長期入院となる児や,退院後も在宅酸素療法,気管切開,人工呼吸器,経管栄養などの医療的管理を継続しなければならない児が問題となっている。さらに当院は,2013年に小児がん拠点病院に指定され,小児がんの子どもに対するリハビリテーションニーズが高まっている。小児領域のリハビリテーションは,長期にわたることが少なくないため,理学療法士は身体面のみならず心理的サポートを担う役割が求められ,児を取り巻く環境すべてを考慮し,関わる人すべてと協働し,専門分野の枠組みを超えて,協働体制を確立していく必要がある。また,小児領域の理学療法は,個別性が求められ画一的な介入が困難な側面がある。介入の妥当性について,科学的根拠を示すことが困難であるが,それに向き合って行くことが私たちの責務である。「小児期」についての考え方は様々であるが,今回は当院小児科入院した子どもを対象とした。その中から,発展的に介入しているNICUに入院した早産児や低出生体重児やハイリスク児と,小児がんの子どもに対する理学療法士の取り組みを中心に紹介する。
短報
  • ―宮城県大崎地区における介護予防事業(二次予防事業)からのデータより―
    松井 一章, 藤原 孝之
    2016 年 27 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/21
    ジャーナル フリー
    二次予防事業における運動教室が地域高齢者の日常生活活動にどのような影響を及ぼすのか,大崎市内で平成25年5月~平成26年2月まで実施された運動教室を通して検証を行った。対象者は,地域在住の高齢者160名(男16名 女144名)であった。まず,運動教室の前後で体力測定[握力,開眼片脚立位,5 m歩行,TUG(Timed up and go test)]及び老研式活動能力指標の比較を行った。続いて,運動教室で測定された体力測定項目の中で,日常生活活動に影響を与える要因が存在するのかどうかを検証するため,老研式活動能力指標のうち,「手段的自立」項目を従属変数,各体力測定項目を独立変数としロジスティック回帰分析を行った。結果は,体力測定値については握力を除く全項目で運動教室前後に有意差が見られたが,老研式活動能力指標の得点においては有意差が見られなかった。一方,ロジスティック回帰分析の結果からは,TUGにおいてのみ「手段的自立」項目との関連性が選択された。今回対象とした運動教室では,地域高齢者の日常生活活動向上に一部運動機能が関連することが見出されたものの,より効果的な運動教室としていくためには,今後その内容を検討することが必要であるのかも知れない。
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