抄録
フレイルは,高齢期において生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進して不健康を引き起こしやすい状態と定義され,身体的な問題のみならず,精神・心理的問題,さらには社会的問題を含む概念とされる。しかし,これらの多側面でのフレイル判定方法が十分に確立している状況には至っていない。身体的フレイルに関しては,国際的に概ね共通した理解が図られており,わが国での大規模コホート研究によるデータも蓄積されてきており,地域高齢者における身体的フレイルの有症率は7.4%程度とされている。身体的フレイルと判定されると,悪化の一途をたどるわけではなく,適切な介入によって身体機能やADL能力の向上,さらにはフレイルからの脱却が期待されている。認知的フレイルや社会的フレイルに対しても,効果的な介入手段の検討が必要であり,個別を対象とした介入に留まらず,フレイル予防のための地域での人的・物的資源の拡充を含めた地域社会の環境体制の充実も課題のひとつであろう。