理学療法の歩み
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28 巻, 1 号
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特別寄稿
  • ―早期発見と効果的介入をデータから考える―
    牧迫 飛雄馬
    2017 年28 巻1 号 p. 3-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    フレイルは,高齢期において生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進して不健康を引き起こしやすい状態と定義され,身体的な問題のみならず,精神・心理的問題,さらには社会的問題を含む概念とされる。しかし,これらの多側面でのフレイル判定方法が十分に確立している状況には至っていない。身体的フレイルに関しては,国際的に概ね共通した理解が図られており,わが国での大規模コホート研究によるデータも蓄積されてきており,地域高齢者における身体的フレイルの有症率は7.4%程度とされている。身体的フレイルと判定されると,悪化の一途をたどるわけではなく,適切な介入によって身体機能やADL能力の向上,さらにはフレイルからの脱却が期待されている。認知的フレイルや社会的フレイルに対しても,効果的な介入手段の検討が必要であり,個別を対象とした介入に留まらず,フレイル予防のための地域での人的・物的資源の拡充を含めた地域社会の環境体制の充実も課題のひとつであろう。
  • 阿部 浩明, 辻本 直秀, 大鹿 糠徹, 関 崇志, 駒木 絢可, 大橋 信義, 神 将文, 高島 悠次, 門脇 敬, 大崎 恵美
    2017 年28 巻1 号 p. 11-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    これまでの脳卒中例に対する理学療法技術は十分な科学的効果検証を行われずに継承されてきたものが少なくなかったかもしれない。脳卒中例に対する理学療法は主観的な評価が中心であったり,経験のみに基づいて構築されたりしていくべきものではなく,有効と思われる治療は検証を経た上でその有効性を示していくべきであろう。 前号に引き続き,我々がこれまで取り組んできた急性期の脳卒中重度片麻痺例に対する歩行トレーニングの実際と装具に関わる臨床および学術活動について紹介する。
研究報告
  • 田邊 素子, 高村 元章, 光永 輝彦, 小笠原 サキ子, 庭野 賀津子, 君島 智子, 佐藤 俊人
    2017 年28 巻1 号 p. 21-25
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    東日本大震災から4年が経過した時点における応急仮設住宅で暮らす被災地の住民の生活状況を明らかにすることを目的に,活動性(生活空間評価),社会性(社会的ネットワーク評価),主観的健康感の調査を行った。津波による流出被害の影響が大きい宮城県,福島第一原子力発電所事故の影響が大きい福島県の対象者を比較し,これらの調査項目に差異があるかどうかを検討した。対象者は,宮城県3ヶ所,福島県3ヵ所の応急仮設住宅に在住する女性71名とした。宮城県,福島県の2群間において活動性,社会性において有意な差はなかったが,主観的健康感は福島県の対象者の方が低かった。今回の研究結果は限定的ではあるものの,被災地住民の生活状況から,今後の健康支援を検討する資料と成り得ると考える。
  • 佐々木 美恵, 小原 陽子, 田中 尚, 芝崎 淳, 前田 里美, 冨澤 義志, 髙橋 一揮
    2017 年28 巻1 号 p. 26-29
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    転倒要因は身体機能の内的要因と環境の外的要因からなり,内的・外的要因ともに多角的な評価を行い,その結果を統合して身体機能や住環境に応じた個別の対応をとることが重要と考えられる。高齢者の身体的な特性からみると視覚機能の衰退割合が早いといわれており,転倒要因として重要な要素とされる。そこで,本研究では環境因子に着目し,視覚的情報の違いが toe clearance(以下,TC)に与える影響について,照度と目印の色の違いに焦点を当てて検討した。結果,明所・暗所の条件では明所で有意にTCが小さく,目印の条件では有意差は認められなかった。また,視力との相関は認められず,視力が及ぼす影響は少ないことが示された。よって本研究より,目印の色の認識よりも明所・暗所がTCに影響を与えているということが明らかとなり,障害物の認識には照度の影響が大きいことが考えられた。
  • 地主 あい, 日塔 啓太, 大瀧 夏海, 富塚 万璃, 相馬 正之
    2017 年28 巻1 号 p. 30-35
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,効果的な足趾把持力トレーニングを検証するために,静的ストレッチの介入が足趾把持力に及ぼす影響について検討した。対象は若年健常者40名とし,1週間に4回の頻度で3週間,静的ストレッチを実施するストレッチ群,筋力増強運動を実施するトレーニング群,双方を実施するストレッチ・トレーニング群,特別な介入をしないコントロール群に分類した。測定項目は,足趾把持力,足部柔軟性,足部アーチ高率とし,介入前後に2回計測した。分析の結果,足趾把持力はストレッチ群,トレーニング群,ストレッチ・トレーニング群において有意に向上した。これらのことから,静的ストレッチのみの介入によって足趾把持力は,増強できることが示された。これらの知見から足趾把持力への静的ストレッチの介入は,足趾把持力トレーニングとして有効であることが示唆された。
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