転倒要因は身体機能の内的要因と環境の外的要因からなり,内的・外的要因ともに多角的な評価を行い,その結果を統合して身体機能や住環境に応じた個別の対応をとることが重要と考えられる。高齢者の身体的な特性からみると視覚機能の衰退割合が早いといわれており,転倒要因として重要な要素とされる。そこで,本研究では環境因子に着目し,視覚的情報の違いが toe clearance(以下,TC)に与える影響について,照度と目印の色の違いに焦点を当てて検討した。結果,明所・暗所の条件では明所で有意にTCが小さく,目印の条件では有意差は認められなかった。また,視力との相関は認められず,視力が及ぼす影響は少ないことが示された。よって本研究より,目印の色の認識よりも明所・暗所がTCに影響を与えているということが明らかとなり,障害物の認識には照度の影響が大きいことが考えられた。