2020 年 31 巻 1 号 p. 17-25
日本に理学療法士が誕生してから半世紀を越えた。国家資格として専門職化を進めるために多くの努力が払われてきたが,どの程度専門職としての立場を確立してきたのであろうか。2020年度に20年ぶりとなる養成課程の指定規則が改正されることになったが,臨床実習指導者の要件がより厳格となり,後進育成のためにこれまで以上に有資格者の研鑽が必要となった。これを機に臨床実習の受け入れを終了しようと考える実習施設が出てくるのではないかという危惧が養成校側から聞こえてくる。しかし,自律性の観点からすると,「成員補充の自足性」が専門職を専門職たらしめている重要な要素であることを忘れてはならない。次の時代を担う後進の育成を,養成校と臨床家が連携して担うことが,理学療法士の専門職としての立場を強めるのである。本論文においては,専門職の定義を概観したのち,自律性の観点から理学療法士の専門性を高める方策と,臨床技術を伝承するための臨床教授法について論考する。