2020 年 31 巻 1 号 p. 11-16
神経筋疾患の代表的疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy: DMD)は,ジストロフィン遺伝子異常によりジストロフィン蛋白の欠損により引き起こされる。本来ジストロフィン蛋白は骨格筋のみならず,心筋,呼吸筋,口腔咽頭筋,平滑筋(血管や消化管),さらには脳(主に海馬)や中枢神経にも存在する。そのため,DMDの臨床症状は全身(初期には近位筋)の筋力低下に始まり,呼吸不全,心不全(拡張型心筋症様),嚥下障害,便秘やイレウス,知的障害や発達障害スペクトラムなどが相互に関連しあう複雑な病態となる。非侵襲的換気療法(noninvasive positive pressure ventilation: NPPV)により延命が可能となったDMDにおいて,2019年12月1日に施行された「成育基本法」にのっとり,居住地に関わらず科学的知見に基づく切れ目の無い適切な成育医療が提供されるよう推進する必要がある。