2020 年 31 巻 1 号 p. 33-39
鏡視下腱板修復術(ARCR)を施行したコンプライアンス不良患者の理学療法において,肩甲骨・上腕骨頭位置に着目して介入し,良好な経過が得られたので報告する。症例は60代男性,右棘上筋腱~棘下筋腱の大断裂と診断された。術前の右肩甲骨は下制・下方回旋・前傾位,右上腕骨頭は前方に変位していた。術後は疼痛・断裂の再発防止を目的に,装具固定や日常生活指導による動作制限を設けた。しかし,本症例はコンプライアンス不良であり,術側肩関節の動作制限は困難であった為,修復腱の治癒を阻害しないよう肩甲骨・上腕骨頭位置の改善を図った。その結果,術後半年では肩甲骨・上腕骨位置は改善し疼痛再発なく,術後1年のMRIでは再断裂を認めなかった。ARCRを施行したコンプライアンス不良患者の理学療法では術側肩関節の動作制限に難渋するが,肩甲骨・上腕骨頭位置の改善は疼痛・断裂の再発防止に有効と考えられた。