抄録
千島―日本海溝に沿う地域のプレート境界に発生する大規模な地震の震源域とみなされる領域の一部に、地震発生前および発生後に、同一位置に長期間にわたって地震活動の低い地域が存在することが認められる。大きな地震に先行する、いわゆる“地震活動の空白域”についてはすでに多くの例が報告されている。こゝで取り上げる「空白域」は、震源域の一部の比較的狭い範囲を対象としていること、および地震発生後にも出現すること等が今まで指摘されているものと異なる。
筆者らは、上記の「空白域」がプレート境界に発生する大規模な地震の震源形成に関して重要な意味を持つものと考え、これを「震源域の核」と名付た。震源域の核を中心とする地域の地震活動の推移は、大規模な地震の震源域生成過程、すなわち陸側のプレートと海洋プレートとのカップリング条件の変化を反映したものとして理解できる。
震源域の核およびその周辺の地震活動の変遷に着目し、プレート境界の大規模地震の震源域生成過程を次の5段階―I; 震源域の核の生長 (常時地震活動) II; 震源域の核の形成 (地震前の空白域) III; 前兆的活動 IV; 地震発生と余震活動 V; ディカップリング (地震後の空白域)、に分け各段階におけるプレート間のカップリングの状態、歪蓄積の進行状況等について考察する。