Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
深海圧力測定と, それを用いた外洋潮汐解析
磯崎 一郎田 望飯沼 龍門松本 英照高橋 道夫塚越 利光
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1980 年 31 巻 2 号 p. 87-96

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抄録

 気象研究所は津波災害の軽減を目的として、1978年8月に御前崎の南々西約110km、水深約2200mの海底に水晶圧力計を設置した。 以来今日まで正常に作動している。
 この圧力計の記録を用いて潮汐解析を行い、御前崎の沿岸潮汐と比較して外洋潮汐の挙動を明らかにすると共に、この圧力計の野外における性能を間接的に評価するのがこの報告の目的である。
 日周潮は各分潮とも圧力計記録よりも御前崎潮位の方が遅れて現れ、逆に半日周潮では各分潮とも圧力計の方が遅れている。 遅れの時間は、日周潮及び半日周潮でそれぞれほぼ一定の値である。
 潮汐残差スペクトルを見ると、0.5cpdより低周波側で圧力計の方が御前崎より1オーダー位エネルギ一レベルが低い。 御前崎のスペクトルはエネルギ一レベルがƒ-5/3に比例する勾配を示しているが、0.1cpd~0.4cpdの周波数帯で気象変動に起因すると思われるレベル上昇を伴っている。 圧力計のスペクトルも低周波領域ではƒ-5/3に比例しているが、0.03cphより高周波側では圧力測定の分解能の不十分さに起因するノイズのために勾配が緩かになっている。 この結果0.08cphより高周波側では両者のエネルギーレベルはほぼ同等となっている。
 上に述べた種々の事実から、この圧力計が外洋検潮器としてきわめて有効な装置であると判断できる。

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© 1980 気象庁気象研究所
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