Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
日本における90Sr 降下物の研究
葛城 幸雄
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1983 年 33 巻 4 号 p. 277-305

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抄録

 北緯24°から45°の範囲の、日本の12地点における90Sr月間降下量の時間変化について報告する。
 90Sr積算降下量は、秋田で最も高く、大阪で最も低い。核実験開始以来の東京における積算降下量は現在までに78mCi/km2に達した。
 1963年に、アメリカ、ソ連が大気圏核実験を停止したのち、90Sr降下量は減少をしめしたが、1968年以後中国核実験による放射性物質の降下が顕著にあらわれている。
 中国水爆実験による降下物中の89Sr/90Sr比は、数ヶ月間増加をしめしたのち、e-(λ8990)tの勾配にそって減少をしめす。又原爆実験 (数 100KT級以下) による降下物では前記の勾配より早く、その影響があらわれる期間は数ヶ月乃至6ヶ月位である。
 対流圏および成層圏に放出された放射性物質の滞留時間は、それぞれ30~50日および1.0~1.2年である。
 日本における90Sr降下量の季節変化は、核実験の行われた季節および規模により異なることを明らかにした。
 東京における90Sr降下量と北半球全体のそれとの間には良い比例関係がみられることから、東京における90Sr降下量から、それぞれの中国水爆実験による核分裂量の推定を行った。

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© 1983 気象庁気象研究所
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