2006 年 57 巻 p. 11-19
波浪の効果(wave set-up)を考慮した高潮モデルを開発した。このモデルはPrinceton Ocean Model (POM)と、気象研究所で開発された第3世代波浪モデルMRI-IIIを基本に構成されている。波浪の効果(wave set-up)は、波浪モデルのスペクトルから計算されたradiation stressをパラメータ化して高潮モデルに取り込んでいる。業務での利用を想定して、このモデルではそれ以上の複雑な機構は考慮しなかった。
このモデルは、外洋に面した沿岸における高潮を精度よく推算する。2000年の台風第3号(Kirogi)により、八丈島の八重根検潮所では2.5mという大きな高潮が観測された。従来型の高潮モデルでは、非常に小さな値(最大偏差0.51m)しか計算されないが、新しいモデルではより現実的な値(2.22m)を計算した。この値は、依然として観測値よりは小さな値であるが、wave set-upを評価することにより、最大偏差が1.71m改善されている。