Papers in Meteorology and Geophysics
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改良型マイクロ波探査計(AMSU-A)で観測される暖気核の強さを用いた熱帯低気圧の中心気圧の推定
小山 亮
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2014 年 65 巻 p. 35-56

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抄録

   衛星データを利用した熱帯低気圧の強度、すなわち中心気圧(最低気圧)および最大風速の推定は、特に海上など現場観測データが少ない地域において、災害の防止、軽減に重要であるが、現在も困難な課題である。この数十年の間、気象庁及びその他予報センターにおいて、ドボラック法が主要な強度推定手法として利用されているが、この手法は、熱帯低気圧の雲パターン情報に基づく主観的、経験的アプローチによるものである。本研究では、改良型マイクロ波探査計(AMSU-A)の55GHz帯の輝度温度(TB)データから得られる暖気核の強さから中心気圧を推定する新しい手法を開発した。本手法で導入した回帰式は、AMSU-A観測で得られる暖気核の強さとRSMC Tokyo - Typhoon Centerで蓄積されている2008年の台風事例の気象庁ベストトラック中心気圧を関連付けることにより導出した。この導出では、AMSU-A観測に含まれる粗い空間解像度、氷雲及び降水によるTB減衰の影響による誤差を考慮するようにしている。2009~2011年の台風の中心気圧を本手法によって推定し、ベストトラックデータに対して評価した結果、平均二乗平方根誤差が10.1hPa、バイアスが0.3hPaであった。評価データのうち、全体の51%が誤差±5hPa以内、79.3%が誤差±10hPa以内に収まっていた。また、本手法の推定精度は、暖気核サイズが比較的大きく特定の雲パターンをもつ熱帯低気圧の場合に、ドボラック法による推定よりも高い傾向があることが分かった。

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© 2014 気象庁気象研究所
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