Papers in Meteorology and Geophysics
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日本における大雨の気候学的特性(第1報)
奥田 穰
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1968 年 19 巻 2 号 p. 277-308

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抄録

1951~60年の10年間について,気象官署137地点の資料を用い,日雨量≧50mm,≧100mm,≧150mm,≧200mm,以下100mmきざみで大雨日数を各月毎に取り出し,その地域特性と,特性を意味づける気象じょう乱について検討を加えた。結果を要約すると,次のとおりである。
(1)日雨量≧0.1mmの雨天日数から≧500mmの雨天日数までの階級別度数の分布は指数関数型となる。
(2)6~10月は一般に大雨度数が多いが,4月の度数の多いのも注目される。
(8)大雨日数の地域分布の特徴は,a)半島や島の東側の方が,その西側より多い。b)瀬戸内海,北海道のオホーツク海沿岸,中部地方内陸部の北部地方に著しく度数の少ない地域が現われ,特に顕著な地域は伊豆半島および紀伊半島の東側と,九州の内陸部および南東部である。
(4)(3)の地域分布の特徴は,顕著低気圧(台風を含む)の経路が東進ないし北東進するものが圧倒的に多いこと,それに伴う湿潤暖気の流入は,大気下層で南東成分をもって流入することから説明されるが,さらに,前線度数の多い地域に大雨日数の多いことも付け加えられる。瀬戸内海と中部地方内陸部の度数の少ないのは,地形の影響と考えられる。北海道,特にオホーツク海沿岸の度数の少ないのは,湿潤暖気の流入がこの地方にまで及ぶことが少ないためである。蒸気圧の平年値が13mb以下の地点では大雨日数も少ない。
(5)大雨日数の季節変化およびその年間総度数から,大雨の気候型として4個の典型に分類することが可能であり,各典型間には中間型が認められる。これらによる気候区分は,従来の気候区分にほぼ一致する。
(6)降水密度は,≧50mmおよび≧100mmの大雨日数の良い指標となる。
(7)大雨日数の多発域は季節変化しており,その変化は前線帯や,顕著低気圧,台風の発現度数,経路の季節変化によって説明される。関東地方北部や中部地方中央部の9月の多発域は雷雨によって説明される。
(8)平地と隣接する山岳部との大雨日数の比率は,≧100mmで1.4~1.6倍と山岳部が多くなり,この比率は両地点の年総降水量のそれにほぼ等しい。

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© 気象庁気象研究所
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