1968 年 19 巻 3 号 p. 401-426
潮汐予報の精度は海岸の局地的特性によって異なる。この論文では同一の潮汐解析法にもとずいて得られた30分潮の潮汐常数を用いて,日本沿岸53地点の潮汐予報を行なった結果について,予報の精度や誤差の性質をスペクトル解析の手法によって吟昧した。
外洋に面した検潮所では,30分潮を用いた予報で天文潮の約95%が表現される。一般にはこれは満足できる結果であるが,有明海のように潮差が4m以上にもなる場所ではさらに精度のよい予報が必要であろう。予報誤差はスペクトルで周波数が2cpdのところに集中する傾向があるので,精度向上のためには半日周期の分潮をより多く考慮する必要がある。
湾内,ことに大阪湾と瀬戸内海では潮汐のnon-linear interactionのために予報精度が悪く,天文潮の約90%しか表現されない。この誤差の性質はスペクトル上で非常に明らかで,予報精度を向上させるためには2cpdのほかに5cpd,6cpdなどに属する分潮を考慮する必要がある。