Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
Print ISSN : 0031-126X
ISSN-L : 0031-126X
梅雨期東支那海域の海水温分布の気団の成層およびエコー分布におよぼす影響
二宮 洸三
著者情報
ジャーナル フリー

1974 年 25 巻 3 号 p. 159-175

詳細
抄録
梅雨期東支那海域の海水温分布,気団の成層およびエコー分布の間の関係を,第2次(1969)および第4次(1971)梅雨末期集中豪雨特別観測の資料によって明らかにするのが,この報告の目的である.
冷水域上では気団は冷却され,その成層は著しく安定化される.この過程は簡単な数値実験でもよく再現される.この安定化のため冷水域ではエコーの発達は著しく抑制される.
一方総観的条件が大雨の発生に適すれば(1969年の如く梅雨前線が停滞して)暖水域ではエコー量が多い.しかし,これは気団変質の結果,成層が不安定化してエコーの発達が強化されるからだとは言えない.このような総観状況下では,暖水域上においてすら,気温は海水温より高く,気層の不安定化は加速されないからである.上記した大きなエコー量は,総観状況が積雲対流の発達に適しているならば,暖水域では,その発達が抑制されないからであると説明され得よう.
また,もし総観状況が積雲対流の発達に適しなければ(1971年のごとく),暖水域上でもエコーの発達はみられない.
なお,梅雨期にも軽度の寒気吹出がみられるが(これは大雨の発生する状態ではないが)この場合には暖水域では,“気団変質”(冬期のような)がおこり,最下層では,成層の不安定化がひきおこされることもある.
著者関連情報
© 気象庁気象研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top