Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
Print ISSN : 0031-126X
ISSN-L : 0031-126X
25 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 土屋 巌
    1974 年25 巻3 号 p. 147-158
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    東京の市街部地表面温度観測を,夏の晴天日の午後,数種の航空機搭載リモート・センシングの方法を用いて,4回行なった.
    第1回の観測(1971年8月30日,ナショナルER2001赤外放射温度計使用)では,次のことが明らかになった.すなわち,大量の水のある川の表面温度が最も低温で,自然林またはそれに近い林がそれについで低温であったが,多くの幹線道路のある市街部は緑地の多い郊外部に比べて高温であり,交通量の多い主要街路は最も高温であった.
    第2回の観測(1972年8月4~5日,ナショナルER2002赤外線放射温度計使用)では,加熱された道路やビルについての,航空機搭載の記録上で+5~+10°Cの補正の必要な場合の多いことが判明した.複合した熱源地をいくつか検出したのが,第3回の観測(1972年8月11日, AGA thermovision 680を使用)の成果であるが,その地域は,成層風洞内に逆転層を作った場合の熱対流の実験に相当するものであった.さらに,加熱された市街部での街路樹の環境温度についての記録のとれたことも新しい成果であった.
    第4回の観測(1972年8月19日, Daedalus 走査放射計:Digicolorを使用)では2枚の熱映像を解析することができた.第1は住宅地であり,第2は皇居地区のような大規模緑地をいくつか含む都心の人口密度の高い地区である.大きな緑地帯や広い川(隅田川と荒川放水路)の風下地帯の低めの表面温度がはっきり検出できた.
    これらの観測結果によって,夏の晴天日中における発達した温度逆転のもとでは,種々の広がりで複合した加熱または冷却された地域のため,都市の気流は非常に複雑なものになることが示唆される.このような循環が,郊外地区でいくつかの汚染濃度の高い場所を形成する原因となる.
  • 二宮 洸三
    1974 年25 巻3 号 p. 159-175
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    梅雨期東支那海域の海水温分布,気団の成層およびエコー分布の間の関係を,第2次(1969)および第4次(1971)梅雨末期集中豪雨特別観測の資料によって明らかにするのが,この報告の目的である.
    冷水域上では気団は冷却され,その成層は著しく安定化される.この過程は簡単な数値実験でもよく再現される.この安定化のため冷水域ではエコーの発達は著しく抑制される.
    一方総観的条件が大雨の発生に適すれば(1969年の如く梅雨前線が停滞して)暖水域ではエコー量が多い.しかし,これは気団変質の結果,成層が不安定化してエコーの発達が強化されるからだとは言えない.このような総観状況下では,暖水域上においてすら,気温は海水温より高く,気層の不安定化は加速されないからである.上記した大きなエコー量は,総観状況が積雲対流の発達に適しているならば,暖水域では,その発達が抑制されないからであると説明され得よう.
    また,もし総観状況が積雲対流の発達に適しなければ(1971年のごとく),暖水域上でもエコーの発達はみられない.
    なお,梅雨期にも軽度の寒気吹出がみられるが(これは大雨の発生する状態ではないが)この場合には暖水域では,“気団変質”(冬期のような)がおこり,最下層では,成層の不安定化がひきおこされることもある.
  • シェアーマン D.J.
    1974 年25 巻3 号 p. 177-195
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    CATは強力なジェットストリームが大規模な山岳地域を横切るような場所によく見られる.そのような地域にはいろいろな大きさや形の山が存在する.ここでは,特定の山脈を越える気塊の波動現象(山岳波)を研究するというやり方ではなく,むしろ,幾重にも山が連った山岳地域の中に,問題の大気がもっている特定の共鳴波(山岳波)を励起するような最適な大きさ及び形をもった山脈が存在すると考えて研究を進めた.また,簡単な線型山岳波モデルを用いて,山岳波によって生ずる風のシアーと晴天乱気流との結びつきを研究した,
    あるジェット気流の分布とかなり現実的なICAOの標準大気における温度分布のもとでは,山岳波によってひき起されるシアーストレスが乱気流の存在を説明するのに十分であることがわかった.強いシァーの起る層の厚さは乱流の典型的なひろがりの観測される厚さとよく一致する.しかし,用いたジェット気流と温度分布に対しては,強いシアー層は大気のかなり高いレベルで起ってしまう.一方,乱気流の発生頻度に関するデータの多くは,このような高いレベのでの発生確率はより低いことを示している.
  • 磯崎 一郎, 宇治 豪
    1974 年25 巻3 号 p. 197-231
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    BLACKADAR(1965)は大気成層が中立で場ロクリニックな大気境界層の2層モデルに立脚して海洋上の地表風をできるだけ理論的に見積る方法を提案しており,CARDONE(1969)はこのモデルを大気成層が非中立の場合に拡張した.
    この論文ではBlackadar-Cardoneのモデルの性質を調べるとともに,このモデルを用いて現業的に地表風を計算するためのスキームについて述べる.1972年1月5日~12日の期間について,この計算スキームを用いて北西太平洋上の風の計算を行ない,得られた風を用いて波浪の推算を行なった.計算された風および波はいずれも合理的な値であった.
feedback
Top