気圧座標系を用いた3層プリミティブ・モデルによって,大気の大規模運動に及ぼす力学的な地形効果の数値実験を行った。まず,線型理論から得られる解と比較するため,簡単な一様帯状流を与えた場合の初期値問題について調べた。その結果,比較的低い山の場合には理論から期待される定常解の値にほぼ近づくことがわかった。しかし,高い山の場合には,数値実験の結果は線型理論と異なり,山を越す流れよりも山の周囲を回るような流れが卓越し,しかもその波の振幅も比較的小さいことがわかった。
つぎに,鉛直シアーをもった一様帯状流および種々の形の山を与えた場合について調べた。その結果,冬期のヒマラヤ,ロッキーおよび夏期のヒマラヤのような状態の場合には,山の力学的効果によって風下側に定常的な気圧の谷が現われることが示される。一方,夏期のロッキーおよび夏冬のアンデスのような場合はそのような気圧の谷は認められない。また,ここで用いた計算スキームの妥当性を確かめるため,山による重力波発生の模様,全領域の質量とエネルギーの保存性などを調べほぼ満足できる結果が得られた。