Papers in Meteorology and Geophysics
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静止気象衛星による自動気象観測装置
小平 信彦村山 信彦高山 陽三上代 英一
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1976 年 27 巻 3 号 p. 63-73

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抄録

静止気象衛星システムの一つであるDCP-自動観測所-の試作を行ない運用試験を約1年間実施した。DCPは地上回線によるデータ収集が不可能で短波による他,通信手段のない離島や船舶における気象観測データを衛星中継で中枢に集めるシステムで,一ケ年以上の無保守で運用できる事と,外部からの電源の補給ができない制約がある。今回の試作機では消費電力を小さくし小型電源でまかなえること,保守期間を1ケ年以上とれること及び安価であることを主眼として設計を行った。このため若干気象庁の正式観測測器と異なる測器を用いることとなるのはやむを得ない。
観測項目は気温,湿度,気圧,天気,風向,風速,雨量,日射の9項目でこの内天気は感雨器と太陽電池式日照計を用いて雨,くもり,晴を識別し,風向の平均にはベックレー式風向計を用いた。電源容量に大きく影響を与えるものは常時電源が入っている無線受信機及び気象測器の日射計である。受信機には消費電力を少くするため恒温槽を必要としない温度特性の良い水晶発振器が用いられ待受時の所要電力は約0.5Wである。
気象測器では強制通風温度計,及びDewcelは常時電力を必要とするので適当でなく自然通風のシェルタを用いることとした、又湿度計には薄膜の容量変化を用いた方式のものを試験中であり,風向の平均には機械的な方式を用いた。このような低電力システムの採用により年間使用電力は1日12回観測のとき1942AH(12volt),1日8回観測で1850AHとなる。
試験は衛星に相当するシュミレータを同軸ケーブルで接続し途中に伝播損失に相当する減衰器を入れ,約1年間無保守で連続観測記録を行った。気象センサーを気象研究所露場に設置し電源は商用電源を用いた。試験の初期約1ケ月を除いて全期間にわたって故障はなく毎時観測を行つた。1年間の発信周波数の経年変化は許容値1ppm以内であった。

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© 気象庁気象研究所
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