Papers in Meteorology and Geophysics
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雲核測定用熱拡散型チャンバーの改良および製紙工場地域での測定
成瀬 弘
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1978 年 29 巻 3 号 p. 141-150

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抄録
雲核測定用として,便利な熱拡散型チャンバーを試作した.この装置は温度制御が短時問に行われるので,雲核スペクトラムの測定に便利である.熱拡散型チャンバーによる雲核の測定において,チャンバーへ導入する空気の温度とチャンバーの温度が極端に違うと,異常な過飽和が形成される.そこで,規定の過飽和を得るために二つの温度制御方式について,チャンバ内の温度分布と雲核数の測定から調べた.その結果,Case2(Tt>Ta>Tb)における雲核数は,Case1(Ta>Tt>Tb)よりも1.4倍多かった.これはSaxena et a1.(1973)の実験ともほぼ一致し,一時的高過飽和が生じたものと推定される.したがって,温度制御方式はCase2よりもCase1の方が有効といえる.この熱拡散型チャンバーを用いて1976年8月静岡県富士市の製紙工場地域において,若干の測定を行った.その結果,日中における雲核濃度は,エートケン核数よりもSO2濃度との相関が高く示された.また,雲核濃度のピーク時のエーロゾル粒子は,減少時と比較して各過飽和度の測定範囲にわたって活性化しやすい性質を持った多数の粒子であった.これらの測定から,製紙工場地域から発生する硫酸塩粒子が雲核濃度に深く関係していることがわかつた.
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© 気象庁気象研究所
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