日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: A7
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Hyphodiscus属(ビョウタケ目ヒアロスキファ科)の一日本新産種について
*細矢 剛平山 裕美子
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抄録

Hyphodiscusは,ズキンタケ目ヒアロスキファ科に所属し,ゼラチン状の托組織と,基部から先端までが顆粒に覆われた短い毛を持つ小型の子嚢盤を形成することを特徴とする.本属菌は本邦には3種が報告されている(Hosoya , 2002).演者は本邦産ヒアロスキファ科菌類についての研究途上,本属に属する未報告種と考えられる試料を採集し,分類学的研究を行なったので報告する. 本種は,Hyaloscyphaの外見に類似した短い柄をもった小型の子嚢盤を形成する.托外皮層は絡み合い菌組織よりなり,比較的厚壁の菌糸状組織がゼラチン状の基質に埋没する.毛は単細胞,円筒形から棍棒形,無色,最大30μm,最太で4μm,全体に粒径約0.5μmの微小な顆粒が付着する.子嚢胞子は4.5-6 x 2-3μm,円筒形,無色,2個の油球を含む.側糸は分枝せず,円筒形,子嚢先端を越えない.単胞子分離株は,Catenulifera型のアナモルフを形成した.PDA上の生育は遅く制限的で,直径27 mm (23C, 2 週間)のコロニーを形成した.気菌糸はわずかに発達し,束状となる.フィアライドは明瞭~不明瞭,最長17μm,基部で膨らみを帯び,最大 2-3μm ,円筒形から細長いとっくり形.カラーはよく発達し,上部にろうと状に開放し, 最大で分生子の2倍程度の長さとなる.分生子はほぼ球形から洋こま状あるいはかぶら形,しばしば基部は断頭形となり,フィアライド上に連鎖あるいはドロップ状となる. 上記のような性状はHyphodiscus属およびCatenulifera既知種とは合致せず,未報告種である可能性が高い.本菌のITS-5.8S配列は,登録済みの配列の中ではH. hymeniophilusと強く支持されたクレードを形成した.しかし,Catenuliferaと形態的類似性が指摘されているCadophoraとの関係は支持されなかった.

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© 2009 日本菌学会
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