日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: A11
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ABTS存在下での担子菌ラッカーゼによるトリアリルメタン系染料の脱色
*池田 隆造民谷 栄一高村 禅
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抄録

担子菌ラッカーゼはメディエーターの存在下で, ラッカーゼ単独では酸化し難い物質を酸化することが知られている. 前回, 我々は2,2’-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sufonic acid) (ABTS)の存在下での担子菌ラッカーゼによるアゾ系染料Evans blueの脱色について報告した(平成20年度日本菌学会講演要旨). 今回は, ABTS存在下での担子菌ラッカーゼによるトリアリルメタン系染料に対する脱色を解析した.
担子菌ラッカーゼは市販のTrametes sp.ラッカーゼ(大和化成)からイオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過によって精製した標品を用いた. トリアリルメタン系染料はマラカイトグリーンおよびクリスタルバイオレットを用いた. 精製ラッカーゼ(酵素濃度0.5 nM)の両染料(染料濃度0.025 mM)に対する脱色活性は, 反応温度30度, 異なるpH (2.0, 2.5, 3.0, 3.5, 4.0, 4.5, 5.0, 5.5, 6.0, 6.5, 7.0, 8.0), および異なる濃度(0, 0.0005, 0.001, 0.0025, 0.005, 0.01, 0.025 mM)のABTS存在下で, マイクロプレートリーダーを用いて経時的に吸光度を測定することによって測定した. 両染料ともにラッカーゼ単独ではいずれのpHにおいても24時間ではほとんど脱色されなかった. しかしながら, 共存するABTSの濃度に依存してラッカーゼの両染料に対する脱色活性の増加が観察された. 反応6時間後のマラカイトグリーンは0.025 mM ABTS存在下でpH2.5-5.5において70%以上が脱色され, 反応24時間後には0.005 mM以上のABTS存在下でpH3.5-5.0において80%以上が脱色された. 反応6時間後のクリスタルバイオレットは0.025 mM ABTS存在下でpH2.5-5.0において50%以上が脱色され, 反応24時間後には0.005 mM以上のABTS存在下でpH3.0-5.0において70%以上が脱色された. 以上の結果から, 担子菌ラッカーゼのトリアリルメタン系染料に対する脱色活性はメディエーター・ABTSの存在下で著しく高まることが判明した。

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© 2009 日本菌学会
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