抄録
[目的] 真菌の代謝産物は新規生物活性物質発見素材として大きな可能性を秘めている. 本研究では最近分離した真菌Cylindrocarpon sp. FKA-58 株の代謝産物と, 同属に帰属したFKI-4750株の代謝産物の比較について報告する.
[方法] 真菌FKA-58株は箱根のヒマラヤ杉の下の土壌より, FKI-4750株は父島のオガサワラグミ根元の土壌より分離された. 形態観察及び塩基配列解析より両株をCylindrocarponに属する異種菌株と同定した. 両株を10種の培地を用いて振盪培養し, その代謝産物をLC/UVで分析し, 代謝産物に富んだ培地を選択した. 選択した培地でFKA-58株を培養し, 溶媒抽出物を液々分配クロマトグラフにかけ, さらにODSカラムを用いたHPLCにより各ピーク成分を単離精製した. 量的に多い成分は各種機器分析により構造決定し, 抗菌活性等の生物活性を測定した.
[結果・考察] 各培地における両株のLC/UVパターンは大きく異なっていた. FKA-58株で最も代謝産物数が多いと判定されたのは微量金属群を含む培地であり, ここからascochlorinを含む既知類縁体と新規類縁化合物が単離された. FKI-4750株は何れの培地でもascochlorin類を産生しておらず, 明確な代謝産物は既知fusaric acidのみであり, 特に魚油を含む培地で高産生(2.2mg/ml)されていた.
FKA-58株から単離された新規類縁化合物は, グラム陽性菌に対する抗菌活性と, diacylglycerol acyltransferase(トリグリセリド生成に関与する酵素)に対する阻害活性が確認された.
今回の結果より, 既知真菌からも新規化合物は発見できるということ, そして同じ属でも種が異なれば代謝産物は大きく異なることを確認した.