日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: A13
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担子菌類を用いた塩素系殺虫剤DDTの浄化
*足立 亜衣須原 弘登前川 二太郎
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抄録

DDTは、第2次世界大戦以降広く利用されてきた殺虫剤である.この物質は,非常に安定な物質であり,一度環境中に放出されると食物連鎖上位の生物に大きな影響を与える.これまで,バクテリアや木材腐朽菌などによるバイオレメディエーションが研究されてきたが,真菌類を用いた研究は初期段階である.そこで,担子菌類を用いてDDTの生物処理に有効な菌類の探索を行った. はじめに,腐生菌を中心に全国から採集した37属65種,不明種31株を用いてHPLC分析によるDDT減少率を指標としたスクリーニングを行った.その結果,TUMC10103 9%,TUMC 10102 10%,TUMC10105 30.7%,TUMC10104 31.9%,TUMC10101 18.7%を優良菌株として選抜した. GC/MS分析を行った結果,TUMC10103,10104から代謝物DDDと考えられる物質が検出された.これら両菌株はHPLC分析でも同様にDDDと思われるピークが検出されているため,DDTはDDDへと代謝されることが示唆された.また,TUMC10101,10102からはDDTの代謝物として微量のDDDと水酸化物が,TUMC10105からはDDDと痕跡量のメトキシル化物が検出された.そのため,TUMC10101,10102はDDTをDDDへ代謝し,その後水酸化物に代謝するか,もしくはDDTを直接水酸化すると考えられる. 現在までにDDTの代謝物として,水酸化物は報告されておらず,本研究がはじめてである.そのため,今後,代謝酵素の特定を行い,DDTの代謝経路を明らかにし,これらの菌を用いたバイオレメディエーション法の確立を目指す.

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© 2009 日本菌学会
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