抄録
〔目的〕昨年度に引き続き, 耐熱性カビの発芽および生長に及ぼす二酸化炭素の影響について調べたので報告する.
〔方法〕供試菌株は, 食品原材料由来のHamigera avellanea, Neosartorya glabra, N. hiratsukae, N. spinosa, Talaromyces bacillisporus (2菌株), T. macrosporus の7菌株を, オートミール寒天培地で1, 2, 3ヵ月, 25または37℃で培養後, 子嚢胞子懸濁液を定法により調製した. 試験には, 普通ブイヨン(pH5.0, 以下NB培地)とNB培地に寒天末2%を加え平板培地にしたもの(以下NBA培地)を使用した. 子嚢胞子懸濁液を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて106cells/mLに調製した後, ブドウ果汁で置換し80℃, 10分の加熱後, 氷冷して試料とした. NB培地は, あらかじめ48wellマイクロプレートに490μL/wellずつ分注しておき, 各試料を2wellに10µLずつ, NBA培地の場合は2ヵ所に3µLずつを接種した. 試料を接種したマイクロプレートとNBA培地, 酸素吸収剤をアルミパウチに入れ, 酸素濃度0%(二酸化炭素濃度は約10%)になることを確認し, 混合ガスを用いて二酸化炭素と窒素の濃度比(%)30:70, 50:50, 70:30に設定した. 25または37℃で1, 5, 14日間および1ヵ月間培養後, 倒立顕微鏡を用いて子嚢胞子の発芽の有無を計測し, 平均発芽率を算出した. 次に, 画像解析ソフトを用いて発芽菌糸の長さを計測し, これを生長度とした.
〔結果〕NBA培地において, 二酸化炭素濃度約10%では供試菌株全ての発芽を完全に阻害した. NB培地においては菌種によって二酸化炭素の影響が異なり, H. avellanea およびN. glabra は50%, N. hiratsukae は70%で完全に発芽阻害を受けたが, N. pseudodischeri, N. spinosa, T. bacillisporus, T. macrosporus は70%でも完全に発芽を阻害することはできなかった. 生長度は, 全ての供試菌株で二酸化炭素濃度が増すにつれ小さくなった.