日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: A17
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担子菌系半水生不完全菌 Peyronelina glomerulata の隔壁構造について
*山口 薫田中 健治中桐 昭
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抄録

不完全菌 Peyronelina glomerulata は水辺の浸水した腐朽木等に生息し,中心部の20-30個の球形細胞とそれをとり囲む7-17本の腕からなる王冠型の分生子を基質表面の気中に形成する.この分生子は空気を抱き込み,水に浮く構造となっており,半水生菌の特徴を備えている.
すでに我々は,これまでの培養による生活環の解明と形態や分子系統の研究から,本種のテレオモルフはフウリンタケ型担子菌 Flagelloscypha であることを明らかにしている.今回,菌糸隔壁の微細構造を観察したところ,本種が真正担子菌綱に特徴的なパレントソームに囲まれた樽型孔隔壁を有することがわかった.過マンガン酸カリウムとオスミウム酸の2種類の固定法を用いて観察したところ,隔壁孔中央部のseptal swellingの周りに電子を透過する領域を持つという特異な隔壁構造を持つことが明らかになった.同様の隔壁構造は,海生担子菌である Nia vibrissa 及び Digitatispora marina でも観察されている(Brooks, 1975).
系統解析によると, Peyronelina glomerulata 及び FlagelloscyphaNia vibrissa に近縁で,フウリンタケ型担子菌の多くが含まれる Nia クレードに属する.このような特異な隔壁構造がフウリンタケ型担子菌の系統を反映したものなのか,水生環境という生態を反映したものなのか,興味が持たれる.

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© 2009 日本菌学会
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