抄録
イネ籾殻から分離した菌核を形成するCoprinus属の新種
*渡邊恒雄1)・花田 智2)(1)産総
研:2)産総研)
Sclerotium-forming new Coprinus species from rice husks by T.
Watanabe1), S. Hanada2) (1)</
SUP>Natl Inst Adv Ind Sci & Tech (AIST); 2)Natl Inst Adv Ind
Sci & Tech (AIST))
イネ籾殻分解菌を研究中に2006年つくば市の水田に放置された籾殻から1担子菌(TW 06-150)を分離した。PDA上で形成した微小な菌核は褐色で球形または楕円形をし、外壁と内壁がはっきりしており、大きさは、直径180μm以下である。菌糸は粗雑でかすがい連結を有するが他に特徴がない。2ヶ月以上培養すると子実体を形成したが、成熟後短時間で溶菌し、黒い胞子紋を形成した。傘は円筒形から円錐形、高さは80mm以下で、成熟するにつれて平面状から反転し溶菌する。約40個のひだがあり、円筒形、こん棒型のcystidiaや数珠状に連結した楕円形の細胞群を形成する。担子器は球形、4個の小柄を持つ。担子胞子は黒褐色で楕円形、一端は幅広く先端は尖り、他の端は裁断状で中央には発芽口があり、大きさは8-11 x 5-6μmである。本菌は以上の形態的特徴からCoprinus 属の1種と判断したが、同属の分類は遺伝子解析により、新しい分類体系が導入されつつあり、現段階では混沌とている。しかし本菌は微小菌核を形成しイネ科由来の菌である点と、これまで報告された菌核を形成する7種のCoprinus属菌のいずれにも該当せず、新種名をCoprinus graminis としたい。