日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: B22
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系統に基づくPythium属菌の分類学的再検討
*埋橋 志穂美東條 元昭柿嶌 眞
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抄録
Pythium属菌は世界各地の土壌や水域環境に広く分布し, 植物に病気を引起す種が多数知られており, 古くからその病原性や分類, 生態などの研究が行われてきた. しかし, 近年, 水性動物や哺乳類などへ病原性を示す種が報告されたり, 病原性が明らかでない多くの種が土壌中などの様々な環境下に生息することも報告されている. また, 本属は形態的に変異に富み, 近縁属との相違が不明確な種も存在し, 分類学的混乱も認められている. このように, 本属は生態的および形態的に多様な種を含んでいることから分類学的再検討が必要であると考えられる. そこで, 演者らは, 近縁属も含めて本属の分子系統学的解析を行い, 系統関係を反映した本属の分類学的再構築を試みた. 解析には, 日本各地の土壌から分離した多種の菌株と既存のシークエンスデータ用い, rDNA LSU D1/D2領域およびcoxII遺伝子領域の塩基配列データに基づき, 近隣結合法および最大節約法により分子系統解析を行った. その結果, すべての系統樹は類似の樹形を示し, 本属が形態的特徴の類似する近縁属とは系統学的に明らかに異なることが示された. 一方で, 本属は5単系統群からなる多系統群であることも明らかになった. そこで, 系統と形態的特徴との関係を検討したところ, 従来本属の種同定で重視されてきた造卵器壁の突起の有無など胞子のう以外の形態との間には関係性は認められなかったが, 各系統群は胞子のうの形状により特徴付けられた. このことから胞子のうの形状が重要な分類形質であると判断し, その形態と系統との関係に基づき分類学的再検討を行った. その結果, 分子系統学的に支持されたこれら5系統群を, それぞれ独立した属とすることが妥当であると結論付けた. なお本研究の一部は財団法人発酵研究所の助成をうけて行った.
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© 2009 日本菌学会
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