日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: B27
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Fusarium属菌2菌種の実在について
*青木 孝之佐藤 豊三澤田 宏之永井 利郎富岡 啓介井垣 善美
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抄録

Fusarium redolens(= F. oxysporum var. redolens)およびF. coeruleum(= F. solani var. coeruleum)はこれまでしばしば他のFusarium属菌の異名あるいは変種として扱われてきた.農業生物資源ジーンバンク微生物部門(MAFF)が進める,Fusarium属菌を中心とした所蔵菌株の分類学的再検討の過程においてこれら2種の保存株を見出した.F. redolensはコンニャクから分離された4菌株でF. oxysporumとして登録されていた.それらは,PDA上で淡紫色~黄褐色の集落を生じ,分生子先端部が屈曲するなどNirenberg & Gerlach (1982)によるF. redolensの記載に一致した.Tef-1α遺伝子領域の塩基配列もGenBank登録の同種菌株と99%相同であった.他方、F. coeruleumはジャガイモ乾腐病菌としてF. solaniの学名で3菌株が登録されていた.それらはPDA上で灰紫色~淡青緑色の集落を生じ,F. solaniに特徴的な長い,いわゆる小分生子柄を生じないなど,F. solaniよりむしろNirenberg & Gerlach (1982)によるF. coeruleumの記載に一致した.これら2種の菌株について, rDNAの18S(部分),28S(部分),5.8S,ITS1およびITS2領域,ならびにミトコンドリア小サブユニットrDNA,Histone H3遺伝子領域の塩基配列を決定し,他の保存菌株と共に分子系統解析を行ったところ,いずれの菌株もF. oxysporumおよびF. solaniの両種複合体のクレードには含まれず,それらの外側に位置した.以上よりF. redolensおよびF. coeruleumは独立種として認識すべきであると判断される.

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© 2009 日本菌学会
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