日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: B28
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ブナ目樹木に寄生する Prosthemium および Asterosporium 属菌の系統分類
*田中 和明上山 茉亜紗Mel'nik V.A.
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抄録

 ブナ目樹木に寄生する Prosthemium 属 (テレオモルフ: Pleomassaria-クロイボタケ綱・プレオスポラ目) と Asterosporium 属 (テレオモルフ未詳) は, ともに星形分生子を形成する分生子果不完全菌類である. 形態的特徴の類似性から両属は近縁であることが想像されるが, 後者の系統情報がないため両属の関係は明らかとなっていない. これまで両属は分生子果形態 (Prosthemium-分生子殻, Asterosporium-分生子層) により区別されてきたが, 分生子の隔壁構造 (真性隔壁か異隔壁か) を重要視する意見もある. このように属定義が曖昧であるため, 所属を誤って記載された種も存在すると思われる. 本研究では Asterosporium 属の系統を明らかにするとともに, 両属の分類に有効な形態形質を把握する目的で, Asterosporium 属菌 3種 (A. asterospermum, A. betulinum, A. orientale) と Prosthemium 属菌 5種 (P. betulinum, P. asterosporum, P. canba, P. stellare, P. sp.) の約60標本・40菌株を用い, 形態比較と分子系統解析 (nrDNA LSU および ITS, β-チューブリン) を行った.
 その結果, 以下のことが明らかとなった. 1) Asterosporium 属の基準種である A. asterospermum (ブナ寄生種) はソルダリア綱 (核菌類) の系統であり, Prosthemium 属 (小房子のう菌類) とは明らかに異なる. 2) A. orientaleP. asterosporum は同一種である. 3) A. orientale および A. betulinum (ともにカバノキ属寄生種) は両種とも Prosthemium へと転属させるべきである. しかし, P. betulinum の学名が既にあるため, A. betulinum については新たに命名する必要がある. 4) 両属を定義づけるのに有効な形態形質は, 分生子果形態の違い (分生子殻か分生子層か) と, 星形分生子の中央部に存在する連結細胞の有無であり, 分生子の隔壁構造に両者間の違いは見られない.

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© 2009 日本菌学会
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