日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: C4
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食植性昆虫ハンノキハムシおよびヤマハンノキの葉から分離された酵母様菌類
*遠藤 力也鈴木 基文竹内 祐子二井 一禎
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抄録
 ハンノキハムシ Agerastica coerulea は, ハムシ科ヒゲナガハムシ亜科に属する体長7 mm ほどの甲虫で, ハンノキ類の葉を食害する食植性昆虫である. 一方, 葉面をハビタットとする酵母類, いわゆる葉面酵母 (Phylloplane yeasts) は我が国で多くの種が分離・新種記載されてきた. 葉面酵母はハンノキ類の葉上にも存在すると考えられ, ハンノキハムシはそれらを葉とともに摂食していると考えられる. 葉面酵母と葉を食害するハムシとの間にはなんらかの生物間相互作用が存在することが疑われるが, この点に着目した研究例は無い. そこで, 本研究では葉面酵母とハムシの相互作用に関する基礎的知見を得ることを目的として, 食害を受けていないヤマハンノキ Alnus hirsuta var. sibirica の葉2 枚, およびヤマハンノキを食害しているハンノキハムシ成虫2 頭の糞から菌類を分離し, そのうちの酵母様菌類についてLSU rDNA D1/D2 領域の塩基配列を決定し, 相同性検索を行った.
 分離の結果, 虫の糞と葉から共通に分離されたのは, Unidentified fungal sp. 1 (Erythrobasidium hasegawianum との相同性100%, 以下, sp. 1) とUnidentified fungal sp. 2 (Aureobasidium pullulans との相同性100%) の2 菌種のみだった. また, sp. 1 はハムシ2 頭のどちらの糞からも優占的に確認された. 一方, ヤマハンノキの葉2 枚のうち, sp. 1 は一方の葉から低頻度に分離されたのみだった. このことからsp. 1 は葉面とともにハンノキハムシの消化管内もハビタットの1 つとしている可能性が示唆された. 今回供試したサンプルは1 地点由来のものであり, 今後サンプルの採集地および供試虫数を増やし, sp. 1 が安定的にハンノキハムシから分離されるか否かを検証する必要がある. また, 宿主であるヤマハンノキおよびハンノキハムシと, sp. 1 の間にいかなる相互作用があるか検討していきたい.
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© 2009 日本菌学会
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